ガンで起こるサルコペニアを防ぐ

悪液質に至った際にはQOL(英: quality of life=生活の質)の向上が第一ですが、その前の段階では栄養障害に陥らないようにすること、特に飢餓状態から「サルコペニア」にならないようにすることが重要です。

サルコペニアとは骨格筋、すなわち身体を動かすための筋肉の量が減り、それに伴って筋力または身体機能が低下した状態を指します。

なぜ、サルコペニアに気をつける必要があるかというと、サルコペニアは人の身体から運動能力を奪うことによって、いきいきと生きる力を奪ってしまうからです。

サルコペニアは加齢、すなわち年を取ることによって起こるほか、栄養障害、運動量の不足、病気などによっても起こります。

ガンの場合は、体内に慢性炎症がある状態ですから、じわじわとタンパク質が消費されていきます。そのため、ガン患者では栄養が不足して飢餓状態になると、あっという間にサルコペニアになってしまうのです。

飢餓状態になると通常、私たちの身体はセーブモードになり、エネルギー消費量が減ります。代謝率を下げ、身体に蓄えた糖や脂肪の消費を極力抑えて長持ちさせ、タンパク質が使われるのを防ぐのです。

ところが、ガンがあると、飢餓状態になってもエネルギー消費量が減りません。そのため、すぐに糖や脂肪が使い果たされてしまい、タンパク質がエネルギー源として使われるのです。

しかもタンパク質は、糖や脂肪と違って余剰分を備蓄しておくことができません。皮下脂肪を蓄えるように、タンパク質も皮下かどこかに蓄えられればいいのですが、それが出来ないのです。

その結果、タンパク質で出来ている筋肉からタンパク質がどんどん引き出されて、歩けなくなり、立てなくなり、座れなくなり、運動能力が失われてしまうのです。

膵臓ガンで切除不能の患者さんなどは、ガンが進行するにつれて、骨盤や背骨を支える大腰筋(だいようきん)という筋肉が小さくなっていきます。大腰筋の面積が、前悪液質の段階から不可逆的悪液質の段階に進行すると、ほぼ3分の1にまで減ってしまいます。

ここに至ると、自分で自分の身体を支えることが出来ません。座れないし、もちろん歩くことも出来ないし腕も脚も細くなって、自分で自分のことが出来なくなります。

自分でご飯も食べられない、下の世話も出来ない、痰も出せない。こうなると「もう、どうでもいい」と思ってしまい、生きる意欲を失い、心がポキっと折れるのです。

つまり、医療者がするべきことは、いかに筋肉量を維持し、サルコペニアにさせないか、それが重要なのです。

ガンの場合、本当に最後の2週間程度は、どうしても悪液質によるサルコペニアになります。けれども、早くからタンパク質とエネルギーを投与すれば、そこに至るまでの時間を伸ばすことが出来ます。

ベッドから降りて立つことができる、トイレに行ける、座ってご飯が食べられる。すると、気力を保つことができる。最後まで「私は生きている」という気持ちで生活することが出来るのです。

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