慢性肝炎・肝硬変と栄養の関係性について

慢性肝炎とは、6ヶ月以上にわたって続く肝臓の炎症です。肝硬変とは、慢性肝炎が進行し、肝臓の細胞が線維化して硬くなってしまった状態を指します。慢性肝炎と肝硬変はウイルス、アルコール、薬剤、自己免疫、過栄養、代謝異常などによって起こりますが、最も多いのはC型肝炎ウイルスによるもので、慢性肝炎の6~7割はC型肝炎ウイルスが原因だといわれています。

慢性肝炎は自覚症状がほとんど無い為、血液検査で異常が見つかって初めて診断されることが多い病気です。ただし、自覚症状が無くても肝臓には鉄が沈着していたり、脂肪が溜まって脂肪肝になっていたりすることがありますし、肝臓が悪いのにもかかわらず肥満傾向にある人が多いという特徴もあります。鉄や脂肪は肝炎を悪化させますから、栄養管理士は、まず鉄や脂肪の投与を制限することを考えます。栄養障害の治療では、一般的に栄養素を補充することが多いのですが、慢性肝炎の場合は、特定の栄養素を制限することがあるのです。

肝硬変と診断された場合、初期には慢性肝炎と同様に肥満している人もいます。したがって、その人の栄養状態に合った栄養を投与することが重要です。昔は肝臓病の栄養療法というと、一律に高タンパク・高カロリーでしたが、それだけでは実情に合わないのです。

ところが肝硬変が進行すると、多くの患者はPEM(Protein energy malnutriton=たんぱく質・エネルギー欠乏症)に陥ります。タンパク質とエネルギーが不足するわけですが、これには食欲が落ちて食べられなくなることに加えて、肝臓が委縮した為に糖を蓄えられなくなることが大きく関わっています。

肝硬変になると、肝細胞が線維化して肝臓が委縮し、肝臓に本来備わった、糖質を蓄える倉庫としての機能が低下します。通常ならば私たちの身体は、絶食状態のときには肝臓に貯蔵された糖質を分解してエネルギーにしますが、それが出来なくなるのです。そのため、夕食後から翌日の朝食までの12時間程度の絶食で、健常者の3日間の絶食に匹敵するほどの飢餓状態に陥ってしまいます。

こうなると当然、脂肪やタンパク質を分解してエネルギーを作らざるを得ません。皮下脂肪が消費されて患者はどんどん痩せ、筋肉のタンパク質が分解されて筋力が衰え、あっという間にPEMになってしまうのです。

さらに、肝硬変になると「アミノ酸インバランス(不均衡)」という状態に陥ります。私たちの血液の中には、主に筋肉で代謝されるBCAA(分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン)というアミノ酸と、主に肝臓で代謝されるAAA(芳香族アミノ酸:フェニルアラニン、チロシン)というアミノ酸があって、通常はBCAAがAAAの約3.5倍の比率になっています。

ところが肝硬変になると、肝機能が低下してアンモニアの解毒がうまくいかなくなります。すると、その代わりに骨格筋の中で解毒されるアンモニアが増え、その処理にBCAAが使われます。さらに、肝臓でのエネルギー生産が低下し、その代わりに骨格筋の中でのエネルギー生産が上昇し、ここでもBCAAが使われます。その結果、BCAAとAAAのバランスが崩れて1:1程度になってしまうのです。

そもそも肝機能が低下すると、肝臓の最も大切な機能であるタンパク質を合成する働きも低下して、血液中のタンパク質であるアルブミンも減ります。しかも、肝臓のエネルギー源であるBCAAも減ってしまう為、タンパク質合成能は更に下がり、血液中のアルブミンの量(血清アルブミン値)も更に低下します。血清アルブミン値は栄養状態を判断する際の指標の1つであり、これが減ると薬の副作用が強く出たり、身体がむくんだり、末梢にまで栄養が届かなくなったりすることは、先に述べたとおりです。肝硬変の場合は、血清アルブミン値が3.5g/dL未満になると、5年生存率が低下するという報告があります。

このような状態を改善するには、まずBCAAを充分に補充することが大事です。BCAAを長期にわたって投与して、肝臓のエネルギー不足を補うことで、アルブミン値が改善すると同時に患者の予後も改善することが明らかになっているからです。PEMの患者には必要充分なエネルギーを投与することも大切で、基本的には安静時のエネルギー消費量の1.3倍程度のエネルギーが必要です。このとき、増えた分の0.3倍に相当するエネルギーをBCAAで補うと良いのです。

また、絶食による飢餓状態を避けるには、夜食を摂ることが有効です。1日の総エネルギー量は同じでも、それを3回で摂った場合と、夜食も含めて4回に分けて摂った場合とでは、後者のほうがタンパク質の分解を抑制できるとされています。夜食は通常の食事でもいいのですが、ブドウ糖(ビスケットなど)、BCAA製剤(リーバクト、アミノレバンENなど)を眠る前に投与すると、早朝空腹時の飢餓状態が改善され、長期的には血清アルブミン値が改善されるという結果が出ています。

更に、肝硬変が重篤化すると、肝性脳症を合併することがあります。肝機能の低下によって、肝臓で解毒されるべきアンモニアなどの毒物が解毒できず、血液を介して脳に入り、脳機能が低下してしまった状態です。症状としては、意識レベルの低下や錯乱が生じたり、論理的思考が出来ない、人格が変化する、といったことが起こります。症状が進むと、腕を伸ばしたときに手を止めることが出来ずに羽ばたくような動きをしたり、動作や発語が緩慢(かんまん)になったりもします。

アンモニアなどの毒物の多くは、普通のタンパク質が消化されて出来た物質です。そのため、肝性脳症を発症した場合は、タンパク質を制限する必要があります。しかし、それでは栄養障害に陥ってしまいますから、その代わりにBCAAを含んだ栄養剤によってタンパク質の合成を促進します。また、アンモニアを減少させるには、BCAAに加えてアルギニンというアミノ酸が有効とする報告もあります。

そのほか、身体のむくみ、すなわち浮腫や腹水がある人には、水分や塩分の制限も必要です。

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