慢性腎臓病と栄養の関係性について

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、腎臓の機能が数ヵ月から数年をかけて徐々に低下していく病気です。原因としては糖尿病が最も多く、高血圧や脂質異常(高脂血症)なども含めた生活習慣病が、発症と進行の要因とされています。したがって、糖尿病をはじめとする生活習慣病にならないような食生活を心がけることが、栄養面から見た重要な予防方法の1つです。

そのほかの原因には、尿路閉塞(にょうろへいそく)、糸球体腎炎や多発性嚢胞腎(のうほうじん)などの腎臓の異常、自己免疫疾患などがあります。いずれにしても、腎臓の細い血管(糸球体)や細い管(尿細管)が障害されるなどして、老廃物を排泄したり、体液中の水分や電解質を調整したり、体内で様々な働きをする物質を作ったりする機能が低下して、発症します。

症状は多様で、尿にタンパクが出る蛋白尿(たんぱくにょう)のほか、乏尿(ぼうにょう)・無尿、浮腫、高血圧、尿毒症、高カリウム血症、低カルシウム血症、鉄欠乏性貧血、酸塩基平衡異常(血液の酸性度が高くなる)などがあります。放置すると透析が必要な腎不全になる人が多いことや、脳卒中や心不全を発症する原因となることから、これといった自覚症状がなくても、早めに治療を開始することが大切です。

栄養面では基本的に、タンパク質、塩分、カリウム、リンの摂取制限と、水分のコントロールを行います。慢性腎臓病では尿にタンパク質が出てしまうのですから、タンパク質を補えば良さそうなものですが、タンパク質を摂ると血液がより酸性に傾くうえに腎臓に負担がかかり、症状を悪化させてしまいます。タンパク質が失われてしまうのに、補うことができないわけです。

したがって、必要なエネルギー量を確保するには、タンパク質の摂取量は減らし、代わりに炭水化物の摂取量を増やします。また、BCAA(分岐鎖アミノ酸と呼ばれ、具体的には必須アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシン)をはじめとする必須アミノ酸を投与することで、体内でのタンパク合成を促進して、栄養障害に陥るのを防ぎます。

慢性腎臓病では、余分な塩分や水分を体外に排泄することもできなくなります。こうなると血液の水分量が増えてしまい、心臓にかかる負担が大きくなり、心不全を発症することがあります。これを防ぐには、塩分と水分の摂取を制限する必要があります。

血中のカリウム濃度は、慢性腎臓病が進行すると上昇します。血中のカリウム濃度が高くなると、不整脈や心停止を起こすリスクが高まるため、これも制限しなければなりません。食事の際には、果物や野菜などカリウムが多く含まれる食品に注意が必要ですし、栄養剤を摂る場合もカリウムの少ないものにしなければなりません。そして食物繊維やビタミン、ミネラルなど、果物や野菜をあまり摂れないために不足しがちな栄養素を補える栄養剤を選ぶことが大事です。

リンは、骨や筋肉の代謝などに重要な役割を果たしていますが、腎臓の機能が落ちると排泄できなくなり、蓄積していきます。すると、骨の形成と維持に異常が生じ、骨に痛みが発生したり、骨折のリスクが高くなったりします。また、血管内にカルシウムとリンの沈殿物を形成したりもします。したがって、リンも摂取制限をしなければならず、リンを多く含む魚介類や乳製品、レバー、豆類などには注意が必要です。

さらに、低カルシウム血症の場合はカルシウムを、鉄欠乏性貧血の場合は鉄を補うなど、特定の栄養素を補う必要もあります。

このように、慢性腎臓病では様々な栄養素の摂取制限や投与が必要ですが、かといって低栄養になってしまっては、予後が良くありません。透析が必要になるまでの時期を出来るだけ延ばすためには、制限をしつつも充分に栄養を摂ることが大事です。

透析が必要になった場合は、やはりタンパク質、塩分、カリウム、リン、水分などの摂取制限が必要です。同時に、味覚障害や吐き気など様々な理由から食欲不振に陥ることがあり、食事摂取量が不足しがちです。タンパク質の喪失量が増加したり、分解が亢進したりしますし、透析によって水溶性ビタミンが失われたりもします。その上、透析患者は様々な原因によって炎症が起こりやすく、炎症性サイトカインによる筋肉量の低下や、血中のアルブミン量低下なども起こります。

透析患者は、いくつもの要因が重なり合っていて、栄養障害に陥りやすいのです。したがって、食欲不振、活動性の低下、体重減少、体脂肪や筋肉量の減少といったサインを見逃さず、細やかに栄養管理を行う必要があります。

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