外傷、火傷(やけど)と栄養の関係性について

重度の外傷や火傷を負うと、大きな外科手術を受けたときと同様に、炎症性サイトカインが放出されて全身に炎症反応が起こります。外傷や火傷の範囲が広いと、皮膚のバリア機能が失われて感染症にかかりやすくもなります。したがって重度の外傷や火傷では、細胞増殖を促して傷を治すための栄養に加えて、炎症を鎮め、免疫機能を維持するための栄養も必要です。

エネルギーは、重症であればあるほど大量に必要です。1日に必要なエネルギー量(kcal/日)は、「基礎エネルギー消費量×活動係数×ストレス係数(侵襲因子)」で算出しますが、重症度によってストレス係数が変わってきます。

火傷の場合、範囲が体表面積の 0~20%では、ストレス係数は 1.0~1.5です。範囲が20~40%に広がるとストレス係数は 1.5~1.85となり、40~100%では、1.85~2.05にまで増えます。ちなみに外傷の場合は、骨折のストレス係数
が 1.15~1.3、筋肉外傷が 1.25~1.5などとなっています。

栄養素としては、免疫細胞を作ったり組織を修復したりしなければなりませんから、その元になるタンパク質やアミノ酸が大量に必要です。タンパク質の投与量(g/日)は「体重(kg)×ストレス係数」が目安です。健常な成人の場合はストレス係数が1ですから、体重が 60kgの人なら1日に 60gです。ところが外傷や火傷がある場合は、重症であればあるほどストレス係数が大きくなります。したがってエネルギー量と同様に、重症度に応じて 1.1倍、1.2倍と増えていき、場合によっては2倍にまでもなることがあります。

アミノ酸の中ではBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が大事ですが、特にロイシンが重要です。ロイシンが代謝されてできるHMBという有機化合物は、タンパク質の崩壊を防ぎ、合成を促進して傷を治す作用が非常に強いのです。

更に、グルタミンとアルギニンも充分に補う必要があります。グルタミンとアルギニンには、免疫反応を高めたり、細胞増殖を促進したりする働きがあります。体内で合成できるため必須アミノ酸ではありませんが、外傷や火傷のような侵襲があると大量に消費され、外から補わないと不足してしまうのです。

ビタミンやミネラルも満遍(まんべん)なく摂る必要がありますが、中でもビタミンA、C、EやコエンザイムQ10は重要です。これらの栄養素には、炎症反応などによって生じた老廃物をサッと流す作用があり、傷をキレイにしてくれるのです。また、リン、マグネシウム、亜鉛、カリウムなどは、傷や火傷から体液と一緒に滲(にじ)み出てしまうことがあるため、不足しないように注意する必要があります。

重度の外傷や火傷の場合、栄養を入れる時期や方法も非常に重要です。経静脈栄養では投与できる栄養も制限されますので、今ひとつ治りが良くないため、できるだけ早く経腸栄養を開始する必要があります。特に火傷の場合は、じきに浮腫が出ます。したがって、気道を確保するためのチューブや、経管栄養のための鼻からのチューブをすぐに入れておかないと、あとからでは入れることができなくなってしまいます。どのような栄養管理が必要かを、救急で運ばれて来た瞬間に見極めないと、あとから「経鼻胃管で経腸栄養をしよう」などと思ってもダメなのです。

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