栄養障害があると救急搬送されても回復できない

高齢者には、栄養障害を引き起こしやすい身体的、精神的、社会的な背景があります。たとえば、噛む力や飲む力が弱ってしまって、量を食べられない。あるいは、肉や揚げ物のようなしつこいものが嫌いになった。じっとしているから、お腹が空かない。微量元素が不足して、味覚障害を起こしている。運動不足で筋肉量や骨量が減っている。消化吸収機能やタンパク質の合成能力が低下した。慢性的な病気があって代謝が亢進している。認知障害や鬱(うつ)の為に食事ができない。身体の具合が悪くて買い物や食事の支度ができない。経済的に苦しく食費を節約している、等々。栄養障害に直結する様々な要因が、身近にあるのです。

そのため高齢者は、よほど栄養に気を配っていないと、慢性的な栄養障害「マラスムス(Marasmus)」に陥ってしまいます。マラスムスとは、長い時間をかけてエネルギーとタンパク質が欠乏した状態で、PEM(Protein energy malnutriton=タンパク質・エネルギー欠乏症)でもあります。高齢者の栄養障害は ほとんどがコレで、皮下脂肪と筋肉がともに失われていきます。

それに対して、急性栄養障害を「クワシオルコル(Kwashiorkor)」といいます。クワシオルコルは、病気になって代謝が亢進したり、食欲がなくて食べられなくなったり、外傷や治療による侵襲が加わったりして、急激にタンパク質が欠乏した状態です。短期間で起こるため、エネルギーはまだ身体に残っているのですが、タンパク質が崩壊してしまうのです。

タンパク質がどんどん失われていくと、血中のアルブミン量も低下して、水分を血管の中に保持できなくなります。水分が血管の外に出て、腹腔をはじめとする身体のあちこちに溜まり、腹水や浮腫を生じるのです。飢餓に陥って、高度の腹水でお腹が膨れた発展途上国の子供たちの映像を見たことがあると思いますが、クワシオルコルとはまさにあの状態です。

高齢者がケガをしたり、急性の病気になったりすると、マラスムスにクワシオルコルが重なります。ただでさえ栄養状態が悪いところへ、更にタンパク質の喪失が重なって、重度の栄養障害に陥るわけで、こうなると死亡する危険性が高くなってしまいます。

救急搬送された高齢者の累積死亡率を見ると、元々PEMがあるかどうかで、大きく差が開きます。PEMがない場合は、時間が経っても累積死亡率はさほど上昇しませんが、PEMがあると急激に上昇していくのです。つまり、亡くなる人が増え続けるということで、救急搬送されて治療を受けても、回復することが難しいのです。

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