退院後の栄養をどうするか

今は在院日数がどんどん短縮化していて、体調が回復しないまま退院せざるを得ない人が大勢います。その背景には、入院日数が14日間以内だと診療報酬点数がたくさん追加されるとか、入院が平均在院日数を超えると診察報酬点数が下がるといった制度上の問題があるのですが、困るのは患者です。特に高齢者は老老介護や一人暮らしの人も多く、家に帰っても食事をきちんと慣れないケースが多々あります。回復するにはタンパク質とエネルギーを充分に摂り、微量元素にも気を配らなければなりませんが、それができないのです。

そのため、いったんは退院しても病状が悪化したり感染症にかかったりして、あっという間に再入院ということが珍しくありません。入院中の栄養管理が適切だった場合は まだ良いのですが、入院中の栄養管理がいい加減だった場合は、退院した時点で「累積エネルギーバランス」がマイナス何千kcalにもなっています。累積エネルギーバランスとは、エネルギー消費量と投与量の差を足していったもので、マイナスの程度に比例してリンパ球の数の低下し、免疫力が落ちていきます。

それなのに「お粥が食べられるようになったから大丈夫」といった甘い認識で退院させられると、重度の栄養障害に陥ってしまうのです。

ガンなどの病気では、退院後も通院しながら治療を受けることがありますが、そ
のようなケースでは尚更です。医師の中には「抗ガン剤治療をしている間は仕方ないね。終われば食欲が戻るから、今は我慢してね」などと言う人がいますが、とんでもありません。その間に累積エネルギーバランスは、どんどんマイナスになっていきます。

そのような事態を防ぐには、飲める人には栄養剤を飲んでもらい、飲めない人には点滴をするなどして、きちんと栄養管理を行う必要があります。栄養を摂ることは、医療行為なのです。アメリカでは、医師も患者も栄養を摂ることが医療行為だと分かっていますから、たとえば管理栄養士から「この人は1日300kcal 不足しています」と言われれば、医師は処方箋を書いて栄養剤を出します。患者も、飲みたくなくてもそれを飲みます。ところが日本では、医師も患者も退院後の栄養の重要性に気づいていないことが多いです。

退院してからの高齢者の生活を支えるには、まず、医療関係者が栄養の重要性に気づく必要があります。更に、医療機関と高齢者の生活をつなぐシステムが必要です。病院のスタッフがサポートするのはもちろん、在宅医療や看護をはじめ、ケアワーカーや薬局、ご近所など、地域の力も借りてサポートする。そのようなシステムがあって初めて、医療行為が完遂(かんすい)できるのです。

栄養が良くなれば、免疫機能も上がって病気になりにくくなりますし、体力がついて活動的にもなります。いきいきと生活を楽しむことができまし、たとえ病気になっても上手に乗り越えることができるのです。

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