栄養の投与しすぎで合併症が起こる!?

栄養療法は、栄養アセスメントを実施して、その人にどんな栄養が必要かを診断したうえで行いますが、気を付けなければならないことがあります。栄養障害を早く治したいと思うあまり、急に大量の栄養を投与すると「リフィーディング・シンドローム(Refeeding syndrome:再栄養症候群)」という重い合併症を起こすことがあるのです。

長いこと飢餓状態にあると、エネルギーとタンパク質だけでなく、リン、カリウム、マグネシウム、ビタミンB₁ などの主要なミネラルやビタミンも欠乏していきます。ところが、これらの血中濃度が下がると、身体の機能が維持できなくなってしまいます。そこで私たちの身体は、これらの栄養素を細胞内から血液中に放出して、血中濃度をある程度保つのです。

このような状態にあるときにエネルギー、すなわち糖を投与すると、一気にインスリンが分泌されて、血中の糖が細胞内に取り込まれます。同時に、糖の代謝に必要なリン、カリウム、マグネシウム、ビタミンB₁なども、血中から細胞内に取り込まれます。そのため血中濃度が急激に下がってしまい、様々な不調が起こるのです。

たとえばリンは、酵素の働きを活性化させたり、エネルギー通貨であるATPの一部としてエネルギー貯蔵に関わったり、酸素とヘモグロビンの結合に関わったり、腎臓における酸・アルカリのバランスに関わったりと、非常に多くの大事な役目を果たしています。そのため、ただでさえ枯渇しかけているリンが血液から細胞内に動員され、消費されてしまうと、心不全や呼吸不全、筋力低下、
痙攣(けいれん)、昏睡など、身体中に重大な影響が出るのです。

同様に、血中のカリウムが枯渇すれば不整脈や心停止が起こる危険性がありますし、マグネシウムが枯渇すれば、やはり不整脈などが起こる危険性があります。ビタミンB₁の場合は、脚気やウェルニッケ・コルサコフ症候群を発症することがあります。

更に、糖を急激に投与すると高血糖になることもありますが、インスリンが一気に分泌されるために細胞内への糖の取り込みが進んで、低血糖になることもあります。糖を投与すればするほど低血糖になるというパラドックスが起こるのです。低血糖がひどくなれば、震えや冷や汗、動悸などが起こり、最悪の場合は昏睡状態から死に至ることもあります。

また、インスリンは腎臓でのナトリウムや水の分泌を抑えるため、尿の量が減って体液が増えます。尿の量が少ないからといって輸液の量を増やせば、体液
がどんどん増えて、心不全や肺水腫を引き起こしてしまいます。

このようなリフィーディング・シンドロームを防ぐには、焦らずにゆっくりと、少量から徐々にエネルギー量を上げていくことが重要です。更に、エネルギーとタンパク質だけでなく、ミネラルやビタミンにも気を配ること、栄養状態のチェックをこまめにすることも大切です。

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