L-カルニチンについて

カルニチンには2種類あり、それぞれ L-カルニチン、D-カルニチンと呼ばれます。これらは互いに鏡に映した関係にあり、重ね合わせることができません。たとえば右足用の革靴を左足に履けないようなものです。

L-カルニチンは、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから生合成される分子量161.21の非常に小さな化合物で、人間だけでなく、昆虫や鳥、哺乳類など、地球上のほとんどすべての生物の体中に存在する成分です。

私たちの筋肉細胞に多く存在しており、脂質の代謝に必要不可欠な物質です。骨格筋に90%以上が含まれています。成人1人あたりに換算すると、15-20gくらいになります。骨格筋以外では、心臓、肝臓、腎臓、脳などに含まれています。

脂質の代謝(脂質からエネルギーへの変換)は、細胞のミトコンドリア内で行われます。しかし、脂質は単独では二重の膜で覆われたミトコンドリアを通過できません。

脂質が体内に取り込まれると脂肪酸に分解され、「脂肪酸」+「L-カルニチン」の結合によりミトコンドリア内に運ばれます。こうして、脂質がエネルギーへ変換され、体内で活用されます。

糖質が瞬発的なエネルギー産生を担うのに対して、脂肪酸は持続的なエネルギー産生を担うことで、筋肉や心臓を効率よく動かしています。つまり、L-カルニチンは脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ役割を担う成分なのです。

L-カルニチンは、アミノ酸の類縁体で、肝臓や腎臓などでリジンとメチオニンを前駆体として、主に肝臓や腎臓で5段階の反応過程を経て生合成されます。

合成されるときには、数種類の酵素、ビタミンC、ビタミンB₆、ナイアシンアミド、鉄イオンなどが必須です。そのためこれらの微量栄養素を日頃から過不足なく摂取しておく必要もあります。

特に子どもの成長期や妊娠中には、L-カルニチンとL-カルニチンの合成に必要な栄養素をたっぷり摂る必要があります。

体内で使用される L-カルニチンは、平均的な日本人の場合、全体の約4分の1が体内の生合成、残りの4分の3が食事からの供給と言われており、大部分が動物性タンパク質から補給されています。

L-カルニチンは、1905年、ロシアの研究者によって発見されました。筋肉中の成分として発見されたため、肉という意味を表すラテン語「carnis(カルニス)」に基づいて「L-カルニチン」と命名されました。

その名のとおり、L-カルニチンは哺乳類の筋肉中に多く含まれています(特に羊。卵・豆・野菜類にはほとんど含まれていません)。人の場合では、成人一人あたり約20gの L-カルニチンが含まれています。

L-カルニチンは草食動物の体内で、えさの植物に含まれるアミノ酸を原料として作られ、筋肉などに蓄えられます。肉食動物はその草食動物の肉を食べることによってL-カルニチンを補給しているものと考えられます。雑食性といえるヒトもまたそのようにして普段食べる肉類から L-カルニチンを得ているというわけです。

L-カルニチンは、脂肪を燃焼するミトコンドリアへと脂肪を運び、エネルギーを生み出す上で欠かせない成分です。そのため、不足するとエネルギーが効率良く作られず、体のだるさや息切れ、疲労感などの症状が現れます。

中高年の人の場合、L-カルニチンは、年齢とともに体内で作られる量が減少します。体内量が最も多くなるのは20歳代で、その後徐々に減っていき、60歳になると20歳の頃の約60%にまで減ってしまうといわれています。

また、年を取ると若い頃と比べて食事量が減り、和食中心の食事に変わることで、L-カルニチンが多く含まれる肉類を食べる機会も減ってしまいます。このような食生活の変化も、L-カルニチンの摂取量が減ってしまう要因となります。

またダイエット中の人の場合は、どうしても食生活が偏りがちになってしまいます。すると、L-カルニチンや L-カルニチンの材料となるリジンやメチオニンを十分に補うことが難しくなります。

ダイエットのために極端な食事制限をしていると、L-カルニチンの量が不足する可能性があります。

さらに運動量の多いスポーツ選手や趣味でスポーツをする人、仕事で体を動かすことが多い人はより多くのエネルギーを必要とします。その分、L-カルニチンの消費量も多くなるので、不足しがちになります。

以上のような人は、意識して L-カルニチンを摂取することが重要となります。

L-カルニチンは脂肪燃焼機能のほか、細胞中のミトコンドリアにたまってくる不要で有害な脂肪を尿中に排泄する仕事も担っています。これらの仕事が停止すると死に至ることになってしまいますので、外部から補給できない状況に陥っても大丈夫なように常に体内で生存に必要な量が作られているわけです。

L-カルニチンの外部補給によって様々な年齢や体調の人のQOL(生活の質)を高められる可能性があり、より効果的で理にかなった使用方法を求めて日夜研究が続けられています。

L-カルニチンは「脂肪燃焼」という働きから、ダイエット食品の素材として知られています。しかし、L-カルニチンが注目されはじめたのは、心臓に対する働きが明らかになったことがきっかけでした。

心臓の働きが弱り、息切れや動悸がする人に L-カルニチンを摂取させたところ、症状がやわらいだという研究結果を受け、L-カルニチンは各国で心臓病の治療薬として認められるようになりました。

そして、L-カルニチンの心臓に対する働きへの研究が進められるようになり、その中で心臓の筋肉が動くときに必要なエネルギーをつくる際、L-カルニチンが関わっていることが明らかになりました。

研究を続ける中で、L-カルニチンは、心臓以外の筋肉が動くためのエネルギーをつくる上でも必要な成分だと仮定され、1980年のモスクワオリンピックで証明されました。 L-カルニチンのサプリメントを摂取したイタリアのチームが、見事に好成績を上げたのです。

この出来事をきっかけに、L-カルニチンがスポーツ選手向けの成分として注目を集めることとなりました。

1990年代に入ると、スポーツ選手の他に、肥満者の運動をサポートする成分として L-カルニチンが広まり始めました。

そして日本では、医薬品として扱われていた L-カルニチンが2003年に食品として認可され、テレビや雑誌で取り上げられるようになり、徐々に認知度を上げています。

2004年には、ドイツのロストック大学にて、経口摂取した L-カルニチンに依存して脂肪燃焼が促進されることが人間への実験によって示されました。
[引用文献] Wutzke KD.ら L-カルニチンが軽度肥満者の脂肪酸酸化、タンパク質代謝回転および体組成に及ぼす影響 Metabolism 53, (8) 1002-1006 (2004)

この実験は特別な運動をしない条件で行われたものですが、積極的に運動をすれば、さらに多くの脂肪が燃焼するのではないか、ということが考えられます。

L-カルニチンが脂肪燃焼に必須の成分であること、また筋肉痛が抑制される現象については早くから知られていましたが厳密な実験でこれらが証明されるようになったのは比較的最近のこと(2002年以降)です。

L-カルニチンに関して専門的に発表される学術論文は1年間に300-400件以上に及びます。2008年厚生労働省研究班によって健康食品240素材についてのヒト試験データの数を調査した結果が発表され、L-カルニチンがトップであることが分かりました。

L-カルニチンは体内で一部アセチルカルニチンという成分に変わり、これが脳に運ばれてアセチルコリンやGABA(γアミノ酪酸)という神経伝達物質に変わったりすることが知られています。アセチルコリンの代謝が活性化されることで記憶力が高まることが論文報告されています。

2005年に発表された研究論文によると、スポーツをしない人に比べスポーツをしながら L-カルニチンを摂取する人の方が「体内で L-カルニチンがより働きやすい体質になり脂肪燃焼も促進されやすくなる」ことが示唆されています。
[引用文献] Lohninger A. et al., Monatshefte fur Chemie., 136, 1425-1442 (2005):(論文邦題)「持久的運動とL-カルニチン摂取は若年アスリート・中年被験者の血中および筋肉細胞における遺伝子発現を高める」

「脂肪燃焼」と聞くと「体に蓄えられた皮下脂肪を燃やす」と思っている人が多いと言われます。しかし、まず体は一番に食事として食べた「脂肪」を燃やしエネルギーに変換します。

そして、エネルギー源として燃やされなかった脂肪が皮下脂肪・内臓脂肪となり蓄積されるのです。

「脂肪燃焼」のパターンを知って L-カルニチンを効果的に活用して下さい。

肉や食用油など、食事で食べた「脂肪」は食後少しずつ燃やされ4~6時間後に燃焼のピークを迎えます。
[引用文献] Wutzke KD. et al. Metabolism Vol 53, No 8, Aug.: 1002-1006 (2004)

脂肪燃焼に関わる各栄養素はそれぞれ独自の機能を発揮し協力して脂肪を燃焼します。

L-カルニチン以外の脂肪燃焼と関わりの深い素材であるCoQ10、クレアチン、共役リノール酸、カフェイン、パントテン酸カルシウムなどと組合わせると、さらなる効果が期待されます。

その他、筋肉を保護する働きを持つBCAAなどのアミノ酸類、L-カルニチンの働きを助けるガルシニアエキス(HCA)や L-カルニチンの生合成を助けるビタミンB1、C、ナイアシンアミド、鉄などとの併用も効果が期待されます。

肥満を防ぐ上で重要となるポイントが、基礎代謝を上げることです。

基礎代謝とは、心臓を動かす・呼吸をするといった生命活動を行うために、最小限必要となるエネルギーのことです。つまり、運動をしていない時にも消費されるエネルギーと言い換えることができます。

基礎代謝が高まると、無理なく健康的に脂肪を燃焼させることができるのです。さらに、L-カルニチンを補給し、適度な運動を取り入れるとより効率良く脂肪を燃焼させることができます。運動をすると筋肉が増え、基礎代謝を高めることにつながり、肥満予防に効果的です。

L-カルニチンを摂取することで、疲労感やだるさをやわらげることができます。

一時的な疲れであれば、体を休めることによって回復することができますが、日常的・慢性的に疲れを感じている人は、L-カルニチンが不足している可能性が考えられます。

エネルギーを生み出す原動力となる L-カルニチンを補うことによって、疲れを回復することにつながります。

近年は不妊症で悩まれるカップルが少なくありませんが、L-カルニチンは精子のエネルギー代謝にも関与し、不妊を改善する期待が寄せられています。

L-カルニチンは、約50年前から医薬品として「L-カルニチン欠乏症」の治療に用いられています。

L-カルニチンが欠乏すると、低血糖発作による昏睡を引き起こすなど生命を脅かす症状が現れることもあります。このため、L-カルニチンを経口投与により補う目的で治療薬として開発・認可されました。

L-カルニチンは、ヒトでは筋肉の中に多く存在することから、筋肉の塊である心臓の働きを助けるという臨床研究が発表されています。狭心症やうっ血性心不全などの症例が改善したと報告もあります。

また、L-カルニチンの摂取により、動脈硬化の兆候が見られたという報告もあります。

L-カルニチンの効果的な摂り方

生活習慣や体質により必要量は一律ではありませんが、一般的には200mg~500mgの継続的な摂取が望ましいといえます。

L-カルニチンは野菜や果物にほとんど存在せず、主に肉類の赤身に含まれている成分であるため、和食を主とする日本人の場合、通常の食事からは十分に摂ることは難しいといわれています。

日本人の1日の L-カルニチン平均摂取量は75㎎程度とされていますが、その量は個人によって差が生じます。国や生活習慣によって L-カルニチンの摂取量には違いがあります。

たとえば、肉を食べる習慣が少ないインドの人々は、1日摂取量が30㎎程度であるのに対し、L-カルニチンを豊富に含む羊の肉をよく食べるオセアニア(オーストラリアやニュージーランド)やモンゴルの人々は、1日300~400㎎もの L-カルニチンを摂取しているといわれています。

例えば牛肉1kgには約700mg含まれていますが、現実的にはそんなに食べることは容易ではなく、かえって余分な脂肪を摂取することによって消化器系への負担を強いることにもなります。その点からも、サプリメントで無理なく補給することをお勧めします。

サプリメントには大きく分けて「摂取して比較的短時間に効果が現れやすいもの」と「継続的に摂取することで力を発揮するもの」の2つのタイプがあります。L-カルニチンは後者のタイプになりますので、毎日続けて摂取することが重要なポイントです。

L-カルニチンを飲むタイミングについては特にルールのようなものはなく、基本的にはいつでも大丈夫です。ものに例えると・・・貯金箱のようなものです。朝でも晩でもいつお金を入れてもたまっていく額は同じ。L-カルニチンも貯金箱のお金のように筋肉を中心とした体内に毎日少しずつ貯めていくことが大切なのです。

朝晩の食後や就寝前など、自分のライフスタイルに合わせてタイミングを決めると続けやすいのではないでしょうか。

L-カルニチンは食品素材として非常に安全性が高く、1日あたり体重1kgにつき20mg(体重が50kgの人であれば1000mg)を毎日生涯にわたって摂り続けても安全であると評価されています。これをADI(1日許容摂取量)と言います。

しかし、一度に大量摂取しても余剰分は尿中に排泄されますので必ずしもメリットは期待できません。大切なことは、継続的に適正量を摂っていただくことです。適正な摂取は L-カルニチンに限らず、多くの食品成分に共通する性質だといえます。


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