良質な塩とは「値段が高い塩」という意味ではありません

最近は、「猫も杓子も……」と言いたくなるほど、減塩に気を使っている人が多くなりました。減塩すること自体は、ある意味では間違いではないのですが、正しいとも言い切れません。というのは、基本的に塩は私たちが健康に生きていくためになくてはならないものだからです。過度な減塩は決して健康に良くはありません。要は、摂る塩の質が問題なのです。そして良質な塩を適度に摂ることで、健康な状態が創られ維持されるのです。

昔から「うまいまずいも塩加減」と言われ、おいしい料理をつくるためには塩が重要な役割を果たしてきました。夏の暑い盛り、スイカに塩を振りかけて食べるおいしさは、何ものにも代えがたく、生き返ったような心地がします。では、その時に振りかける塩はなんでもいいのかというと、そうではありません。塩は単なる調味料にとどまらず、一つの食品として私たちの健康に深く関わっているのです。

ローマ時代には、兵士への給料が塩(salt)で支払われたといわれており、それがサラリー(salary)の語源になったのです。ローマ時代の人たちにとって、塩がいかに大事なものであったかがわかる逸話です。彼らは今でいうところの緑黄野菜に塩を振り、にがみを消して食べるという料理法を考え出しました。これがサラダ(salad=塩を振るという意味)の始まりです。偉大なる発明といえます。その頃の野菜は、今のように品種改良されておらず、かなり野生に近いものだったと考えられ、塩を振ることでアクを取り除いていたのでしょう。

一方、日本人はローマの人たちよりさらに優れた食べ方を考え出し、実践していました。それが「塩漬け」や「浅漬け」と呼んでいるものです。塩を振った野菜を漬け込み、保存して乳酸発酵を起こさせることで雑菌を排除して腐敗を防ぎ、なおかつその乳酸菌の働きで腸の状態を整えることも同時に行っていたわけです。これはサラダにも勝る発明品だといえます。

料理は基本的に薄味に仕上げて、各人がテーブルに置いてある塩を好みに応じて使い、味を調整するのが望ましいと思います。なぜならば、塩の必要量は人によって異なり、また同じ人でも体調や季節によって、また直前の食事の内容によっても変わってくるものだからです。

ところで、良質な塩とは、決して「値段が高い塩」という意味ではありません。値段が高くても質が高くない塩は数多く売られています。「フランス産だからいい」「チベット産だから間違いない」「南米産はおいしい」などということもいえません。そのほとんどは、販売側の作り話で、価格や宣伝文句に惑わされず良質なものを選んでいただきたいと思います。嗜好品のように、いろいろな塩を使ってみることに反対はしませんが、日常的に料理に使う塩は厳選するべきです。それは、私たち自身の健康に直結するからです。

では、どんな塩が良質な塩なのでしょうか。それは「適度にミネラル分を含んだ海塩が最高」です。物質を細かいレベルにまで分けていくと、最終的には元素になります。それはミネラルと呼ばれるものです。ミネラルは地球上に存在する最も細かい分子で、それ以上には分解できません。地球上には92種類のミネラルが存在するといわれていますが、そのミネラルを組み合わせて地球上のすべての物体が出来上がっているのです。

さらに、約30種類のミネラルで生物はできているといわれていますが、人間が生きていくために、どうしても体内に取り込まなければならない成分が、「必須ミネラル」と呼ばれるものです。マグネシウム、カリウム、カルシウム、リン、硫黄、ナトリウム、塩素、セレニウム、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ヨウ素、クロム、マンガン、モリブデンの16種類で、これらすべてを含んでいるのが海水です。

海水の組成は驚くほど人体のそれと似ているのですが、海水をそのまま飲めばいいわけではありません。そのまま飲んでしまうと、マグネシウムやカリウムなどのいわゆる「ニガリ成分」を体内に摂りすぎてしまうからです。それを回避するために昔から製塩という技術があったのでしょう。製塩のプロセスで、余分なニガリ成分を少し落として、理想的な塩がつくられてきました。最も重要なのは、良質な塩を適度に摂ることによって、私たちは体のミネラルバランスを整えているということです。だから、ミネラル分を適度に含んだ塩が必要なのです。

しかし最近では、イオン交換膜法という技術によって塩素イオンとナトリウムイオンだけを抽出しています。この製法では、塩化ナトリウムの純度は高くなりますが、他のミネラルを含まない偏った塩になってしまっているのです。

減塩に取り組んでいる人は、おそらく「塩が高血圧の原因」で、「高血圧は諸悪の根源」という説を妄信していると思います。その根拠になっているのは、二人のアメリカ人の研究によるものです。そのうちの一つは、1954年に行われた医学者、ルイス・ダール博士による疫学調査です。日本人の食塩摂取量と高血圧発症率の関係を調べたものですが、そこには青森から鹿児島までのデータがあり、それによると鹿児島の人は一日平均14グラムの食塩を摂っており、高血圧発症率は20%。青森の方々は一日28グラムの食塩を摂取しており、高血圧発症率は約40%。どちらの結果も、青森は鹿児島の2倍です。そこから「塩は高血圧、ひいては脳卒中の原因になる」という結論が導き出されることとなったのです。

さらに追い討ちをかけるように翌1955年に発表されたのが、メネリー博士の研究です。動物実験の結果を基にしたものですが、その実験とは、10匹のネズミに通常の20倍の塩を6カ月間投与し、さらに飲む水も1%の塩水にしてあったのです。この塩分量を人間に換算すると、一日約500グラムにも相当するのですが、果たしてこれが信憑性のあるものなのかどうか、誰が考えても疑問だと思います。そして結果的に4匹のネズミが高血圧を発症し、残りの6匹には変化がありませんでした。メネリー博士は、この結果をもって「塩を摂りすぎると高血圧になる」という結論を導き出しています。

今から考えれば明らかにおかしいこの説を、なぜか真に受けてしまった日本はその後、国を挙げての減塩運動に向かい、厚生労働省は2015年4月より、一日の塩分摂取量を成人男性で8グラム以下、成人女性で7グラム以下を推奨しています。健康な人が、それで正常な食生活を送ることができないことくらい考えなくてもわかりそうなものですが、それを堂々と発表して憚(はばか)らないのです。

推奨している厚生労働省の職員が本当に一日8グラム以下の塩分摂取で過ごしているのかどうか聞いてみたいところです。さらに、50年以上にわたって続けてきた減塩運動の効果はどうだったのかというと、高血圧の患者は減っていないどころか、増えているというのが悲しい現実です。

また、イギリスの医学誌「ランセット」に発表された論文で、食塩の摂取量と病気の罹患率の関係を調査したものもあります。それは、男性、女性を別々に食塩摂取量の少ない順に4つのグループに分けて、さまざまな病気の罹患率を比べるというものです。その結果は、食塩の摂取量と高血圧には、関係性は見られませんでした。逆に、心筋梗塞など心臓血管疾患による死亡率は、食塩摂取量の最も多いグループが最も低く、食塩摂取量が最も少ないグループが最も高いという結果が出ているのです。健康な25~75歳の成人で、約21万人を対象としたアメリカの「国民栄養調査」から得たデータですので、ある程度信頼してよいと思われます。

つまり、「塩は悪者ではない」と現段階ではいえるのではないでしょうか。ただし大事なのは、どんな塩を選んで食べるのかということです。

結論としては、「塩化ナトリウム99%以上」と書いてあるような精製塩を摂ることを一切やめて、塩化ナトリウム以外のミネラル分の比率が5~10%程度の塩を、体の欲求に応じて、適度に摂るべきでしょう。そのくらいのミネラル分の比率が最も食用に適していると思います。ちなみに、ほとんどの加工食品に使われている塩は劣悪なもので、摂ってはいけないということもご承知おきください。

steve_jobs


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